日本のタワーマンション火災対策と避難方法は安心?世界のタワマン火災から考える

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地上100〜200mにも及ぶタワーマンションで火災が起きたら、一体どうなるのでしょうか?

 

20〜30階の高層階に住んでいる人は、どうやって避難するの?

 

消防車のはしご車が届かなかったら、どうやって消火するの?

 

そこで、日本のタワーマンションの火災対策についてご紹介します。

 

あわせてイギリス・中国・韓国など、日本を含めて世界で起きたタワーマンション火災事例をご紹介。

 

タワーマンションは、火災が起きても安心な対策が取られているのでしょうか?

 

タワーマンションの火災対策や避難経路について正しく知って、万が一の災害時に備えましょう。

 

 

【動画】タワーマンションで火災が起こると実際どうなる?

 

まずは2015年3月に、東京・千代田区の25階建のタワーマンションで起きた火災の映像をご覧ください。

 

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000045507.html

 

出火元は、25階建のマンションの20階部分

 

はしご車は11階くらいの高さまでしか届かないため、20階の火災には対応できません。

 

そこで消防隊員は、タワーマンションに設置されている非常用エレベーターでタワーマンションの内部へ上がります。

 

タワーマンション内部には放水口が設置されているため、地上ポンプ車から送られた水と消防ホースを繋いで、タワーマンション内部から消火にあたったということです。

 

このタワーマンション火災による重傷者は1名・軽症者2名。

 

他の住民は、年に数回マンションで行われる避難訓練の成果もあって、パニックに陥ることなく無事に避難できたということです。

 

まさにタワーマンションならではの火災対策設備と消火方法が発揮された火災事件でした。

 

日本のタワーマンションの火災対策

 

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日本のタワーマンションの火災対策はどうなっているのでしょうか?

 

日本ではタワーマンションに限らず、建築基準法や消防法などで建物の火災対策が定められています。

 

・火災が広がりにくい建物構造

・燃えにくい建材

・カーテンやカーペットに防炎素材

 

を使用するよう厳しい安全基準が定められていることはもちろん。

 

例えば高さ31m(約11階建)以上の高層建築物には

 

・非常用エレベーター

・防火区画

・排煙設備

・中央管理室(非常用エレベーター、排煙設備、空気調和設備の制御・監視をおこなう部屋)

・スプリンクラー(※)

 

などの設置が義務付けられています。

 

(※)スプリンクラーは、2方向以上に避難経路が確保されている場合は設置が免除されている

 

また建築基準法では、5階以上と地下2階以下の階には、

 

・避難階段

 

の設置が。

 

15階以上と地下3階以下に通じる階段には、火や煙が上がることを防ぐ防火戸や防火区画を設けた、

 

・特別避難階段

 

を設置することが義務付けられています。

 

さらに消防法では、7階以上の建築物や、5階以上で延べ床面積が6,000平方メートル以上の建築物には

 

・連結送水管(送水口・配管・放水口・格納箱)

 

の設置が義務付けられています。

 

連結送水管があれば、地上のポンプ車などから水を送り、建物内部から消防ホースを通して消火活動を行うことができます。

 

はしご車などが届かない場合や、外からの消火活動だけでは鎮火が難しい場合に活躍する重要設備です。

 

また高さ100m(約30階建)以上の超高層建築物には

 

・屋上に避難用ヘリポート

 

を設置することも義務付けられています。

 

20階建以上の超高層タワーマンションに限らず、5階〜10階建前後の高層建築物にも、非常に多くの火災対策設備の設置が義務付けられていることがわかります。

 

また建物の高さが高くなればなるほど、避難経路の数も安全性も充実しています。

 

 

タワーマンション火災発生時の避難経路

 

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タワーマンションで火災が起きたら、どのように避難すれば良いのでしょうか?

 

災害時の行動はケースバイケースで100%の正解はありませんが、一般的に安全と言われている基本の避難方法をご紹介します。

 

避難階段

 

タワーマンションの火災時の避難経路の基本が、避難階段です。

 

火災時に限らず、地震などの災害時の避難にエレベーターを利用するのは非常に危険。

 

火災を検知すると、エレベーターは当然停止しますので、火災に巻き込まれる可能性が高くなります。

 

特に15階以上の階と地下3階以下の階に通じる階段は、特別避難階段という構造になっています。

 

特別避難階段には、防火区画となる附室と、防火戸があります。

 

防火区画と防火戸によって火や煙が避難階段に入りづらくなっているため、より安全に避難することができます。

 

避難ハッチ(はしご)

 

廊下側から火の手が出た場合の逃げ道として、各部屋のベランダまたはフロアに避難ハッチ(はしご)が設置されていることがあります。

 

ハッチを開けるとはしごが蓋に取り付けられており、ロックをはずすとはしごが下の階まで下ろせるようになっています。

 

自室のベランダに避難ハッチがない場合は、隣戸のベランダとの間の隔て板を破って、避難ハッチがあるベランダまで移動しましょう。

 

ベランダの隔て板は、簡単に蹴り破れる設計になっています。

 

万が一の避難時に備えて、ベランダの隔て板の前には物を置かないように気をつけましょう。

 

非常用エレベーター

 

建築基準法で、地上31m(もしくは11階)以上の建物には、非常用エレベーターの設置が義務付けられています。

 

しかし非常用エレベーターは、実は住民の避難用エレベーターではありません。

 

タワーマンションなどの高層建物の火災時に、消防隊員が使用することを想定して設置されています。

 

高層階の消火活動には、一般的にはしご車が使われますが、はしごの届く高さは最長30〜40m(約11階部分)。

 

タワーマンション20階などの超高層階で火災が起きた場合には、はしご車では消火活動ができません。

 

そのため高層階での火災には、消防隊員が非常用エレベーターを使ってタワーマンション内に上がり、建物内部から迅速に消火活動が行えるようになっています。

 

しかし足の不自由な人や乳幼児、お年寄りなどは、非常階段で逃げるのが困難な場合があります。

 

その場合は、非常用エレベーターを避難用に利用することがあります。

 

非常用エレベーターは、あくまで消防隊員が迅速に消火活動を行うための火災対策設備。

 

足が不自由な人や乳幼児、お年寄り以外は、火災時の避難には非常階段を利用するようにしましょう。

 

ヘリポート

 

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最近では、地上200m超え・50階建以上の超高層マンションも増えています。

 

タワーマンション火災では非常階段での避難が基本とはいえ、地上50階から避難階段で地上まで降りるのは時間がかかります。

 

そのため場合によっては、屋上のヘリポートから救急隊のヘリコプターなどで避難することもあります。

 

 

世界で起きたタワーマンション火災事例

 

タワーマンションが多いのは、日本だけではありません。

 

世界でも昔から超高層建築物が多く建っています。

 

国によって、建築物に関する法律や防火対策も様々。

 

その国独自の防災文化や安全基準が、火災被害の大小に関わることも。

 

世界で起きたタワーマンション火災事例を参考に、タワーマンションの火災宅について考えてみましょう。

 

イギリスで起きたタワーマンション火災事例

 

2017年6月、イギリスで起こった大規模タワーマンション火災です。

 

出火元は、ロンドン西部にある24階建公営住宅・グレンフェル・タワー。

 

完全鎮火までは約2日間を要し、死者は70名以上。

 

イギリスでは第二次世界大戦後最悪の火災事故となりました。

 

グレンフェル・タワーの火災で多くの人が逃げ遅れ、被害が大きくなった要員はいくつか検討されています。

 

・イギリスの火災発生時の避難方針が、「火災が自室や自室に影響がない限りは室内待機」であったこと(一斉避難によるパニックを抑える目的)

・消火器の使用期限切れや避難経路の不足など、構造上の問題

・前年に行われた大規模修繕で、安全性試験基準に未達の防火性の低い外装材と断熱材が使用されていた

 

グレンフェル・タワーは低所得者層向けの公営住宅で、住民などから防火設備の不備がたびたび指摘されていました。

 

また火災前年の大規模修繕では、コスト削減であったのか、防火性の低い外装材と断熱材がマンション外壁に使用されていたことがわかりました。

 

火は防火性の低い外壁をあっという間に燃やして上階まで伝い、建物全体を燃やしてしまったということです。

 

この火災の後、イギリス全土で高層ビルの外装材などが一斉検査されました。

 

韓国で起きたタワーマンション火災事例

 

 

2020年10月、韓国南東部・蔚山(ウルサン)の33階建ビルで起きた火災。

 

その日は強風だったため、3Fのテラスから出火したあと約20分で建物全体に燃え広がりました。

 

また外壁の断熱材が燃えやすい素材だったため、上階に火が駆け上がり、火災が全体に広がる原因ともなりました。

 

消火には約5時間を要しました。

 

88人が病院に搬送されましたが、重傷者・死者はなく全員救助。

 

ビル内にいた人は、防火区画(待機避難区域)や屋上に逃げていたため、被害が少なかったと考えられます。

 

高層ビル内の防火設備の重要性を改めて考えさせられる火災事例です。

 

中国で起きたタワーマンション火災事例

 

 

2021年3月、中国河北省の26階建オフィスビルで起こった火災。

火は外壁の断熱材などを燃やして上階に駆け上がり、高さ約111mのビルに大きな火柱が立ちました。

幸いにも死傷者・行方不明者はありませんでした。

 

高層ビル火災の場合、外壁が燃えやすい素材だと、火が駆け上がるように上階に広がっていく様が恐ろしいですね。

 

日本(東京・豊洲)で起きたタワーマンション火災事例

 

2021年2月、東京・豊洲位にある44階建タワーマンション「シティタワーズ豊洲ザ・シンボル」で火災が起きました。

 

9階から出火し、ベランダや天井など27㎡が焼けました。

 

消防車14台が出動し、1時間半で鎮火。

 

煙を吸うなどした住人2人が病院に運ばれましたが、いずれも軽症でした。

 

豊洲のタワーマンションでは、火災が起きたものの、上階や周辺に延焼することはなく被害は最小限だったようです。

 

 

まとめ

 

タワーマンションの火災対策と避難方法、また世界のタワーマンション火災事例をご紹介しました。

 

超高層ビルであるタワーマンションは、建物が巨大でその中に住む人の数も多いため、設備や管理が甘いと大災害になる恐れがあります。

 

イギリスのタワーマンション火災は、まさに火災対策の甘さが招いた人災だっというべきかもしれません。

 

日本のタワーマンションは、建築基準法や消防法で、一般のマンションよりもさらに厳しい安全基準と防災設備に守られています。

 

そのため日本のタワーマンションで、大きな火災被害が出た事例は今のところありません。

 

しかし冒頭にご紹介した東京・千代田区のタワーマンション火災から避難した住民が

 

「年数回の避難訓練のおかげで落ち着いていられた」

 

と言っていたように、やはり日頃から防災意識を高く持っていることが何より大切です。

 

ガス機器やタバコなど火の元の始末をはじめ、ベランダの隔て板や避難ハッチをふさぐように物を置かない。

 

避難階段や非常エレベーターなど、万が一の避難経路や避難場所を確認しておく。

 

避難訓練や、部屋の消防設備点検は定期的に受ける。

 

住む人を守るため多くの火災対策に守られているタワーマンションですが、住民1人1人が防災意識を高くもつ事が重要です。

 

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